ヒト、カネ、ミライの3つを支援し
限界突破を可能にするコンサルタント【後編】
ヒト、カネ、ミライの3つを軸に支援する財務コンサルタントであり組織コンサルタント=限界突破コンサルタントの黒田康司氏。経営者が自身の得意分野に専念でき、その能力を存分に発揮できる環境づくりや組織づくりまでサポートする黒田氏に、自身のコンサルティングの特徴や強みなどを聞いた。(聞き手:伊藤秋廣(エーアイプロダクション))
改めて黒田さんのキャリアを教えてください。
黒田:大学は工学部でしたが、「裏切り者」と言われながら文系に就職をしました。当時の金融機関などは理系の人材を求めていて待遇面で良かったのです。
幼少期にイギリスやドイツで過ごした経験があり海外を身近に感じていたため、外資系の就職も考えました。しかし当時は日本から海外に出ていく仕事の方が良いと思い商社も受けましたが、商社は1社も受かりませんでした。そこで、保険業界の中では海外との繋がりもあり、待遇面も良さそうだった東京海上日動に入社しました。
入社後は保険営業がしたいと思っていましたが、配属先は資産運用部門の国際投資に関する部署でした。その部署では海外とのやり取りが多かったので、私の望んだとおりの部署でもありました。そこで4年を過ごし、その後はアメリカの銀行と立ち上げたジョイントベンチャーに移りました。そこはデリバティブ専門の会社で、そこでは主にリスク管理など数字を扱う業務を行っていました。
同社は50人ほどの規模で、スペシャリスト集団でした。私はその中で各部署と関係のあるリスク管理をしていたので、会社のことはある程度わかっているつもりでいました。しかしあるとき人事や経営側については知らなかったことに気づき、上司に掛け合って人事をやらせてもらうことにしました。その会社には8年ほど在籍しましたが、その内6年はリスク管理の仕事をし、それ以降は人事などの仕事をしていました。
人事に対するモチベーションはどこから生まれたのでしょうか。
黒田:ビジネス書の影響を受けていたかもしれません。私は金融工学の世界にいましたが、その危うさも感じていたため、自分のキャリアを安定させ、自分が興味を持っているところを考えたときに、人事が出てきました。
私が行っていた金融工学は理論値の計算です。しかしそれは当たり前ですが、実際とは合いません。現実は読み切れません。当時はアメリカの大手通信会社が倒産したり、原油価格が想定外のレンジに上昇したりすることを見ていて、理論と現実の差に危うさを感じていました。理論を一生懸命にやることの怖さを感じたのだと思います。
そこで次に、アメリカに新しく設立された米州を統括する会社に異動しました。そこではM&Aを企画したり、地域の子会社の経営管理をしていましたが、私は統計や金融工学の知識を活かしてブラジルにある会社を担当していました。その担当していた会社が赤字に転落し、現地に駐在し会社全体を見ることになりました。
実際にブラジルに行き話を聞いてみるとみんなが人のせいにしていたため、最初は詳細がよく分かりませんでしたが、調べていくと意思決定に関わる人数が多すぎて物事が決まらず、責任の所在も曖昧になっていることが分かりました。そこで会議体への参加者を絞り込み意思決定スピードを向上させ、KPIを設定し月次でPDCAを回す仕組み等を導入し、3年で黒字に回復することができました。
金融工学で行う要因の分析と人が絡んだ要因の分析は違うのでは?
黒田:そこまで違わないと思っています。人が絡んでいると金融工学のように数字では見ることができませんが、数字で表されていないだけで、要素を分解して要因や関係性を分析するという点では同様だと考えています。
数字を根拠とした分析が得意な黒田さんなので、その延長として人の関係性などを紐解いて要因を見つけることも得意なのですか?
黒田:私にとってはどちらも同じことのように感じています。
全体を見た判断と、中身を細かく見ていき積み上げで考えたことが、整合していれば、方向性はおかしくないという見方をしています。
ターニングポイントは?
黒田:帰国後、前出のジョイントベンチャーを閉じることになり、それに関わることになりました。その会社には知っている人や自分が採用した人もいます。会社を閉じる前にもっとできたことがあったのでは、と考えると後悔もありましたね。
独立したきっかけを教えてください。
黒田:会社の研修で今後の人生を考える機会があり、80歳まで働きたいと思いました。自分が52歳になるときが東京海上日動で28年働き、80歳までも28年という歳でした。そこで「折り返しなんだから新しいことを初めてもいいじゃないか」と思い、自分がやりたいことや出来ること、社会的に意味があることを考えました。
独立して半年ほどは、社労士や中小企業診断士などの勉強をしていました。スタートの時点では「コンサルっぽいこと」という感じでしか考えていませんでしたね。中小企業診断士の講座を受ける中で、自分にはコンサルティングが向いていると感じました。
今後の目標を教えてください。
黒田:80歳まで働きたいという希望はありますが、従業員を雇ってその人たちに仕事をさせるという考えはなく、専門家同士でアライアンスを組んだ方がレベルが高いと思っています。業務委託で様々な専門家と繋がって、中小企業に限らず難しい案件にも対応していきたいと考えています。
また、コンサルティングだけでは面白くありません。具体的に何をするかについてはまだ決まっていませんが、これまで付き合ってきた、本人は優秀なのに尖っているせいで周りからは嫌厭されてしまっている若い人たちが力を発揮できるような場所を作りたいです。インキュベーションオフィスとしてその中で連携して動けるようなシェアオフィスが作れたら面白いと妄想しています。
実は私は、尖っている若者と相性が良いです(笑)。私は上司と仲良くなるよりは若い人たちと仲良くなる方が多かったので、何かできることがあるのではと思っています。
今後、どのようなカタチでクライアントに価値提供していきたいですか。
黒田:人に頼ることが下手な人が多いですね。「あなたの1時間を無駄に使うなら、お金を使った方が良いのでは」と思うことが多くあり、もったいないと感じますね。私のクライアントでも「自分じゃできないから頼む」と言ってくれるようになった人がいるので、その事例を増やしていきたいですね。今は猫も杓子もコンサルティングと言っているので、コンサルティングに変わる企業の変革をお手伝いするサービスを表す言葉を考えたいとも思っています。
私が考えるコンサルティングは、コンピューターにおけるGPU(グラフィカル・プロセッシング・ユニットの略)です。GPUは3Dなどのグラフィックスの描画や最近ではAIの処理等の負荷の高い処理を担うことでコンピューターの高速な処理を実現しています。経営者=CPUは、たくさんのタスクを処理する必要がありますが、コンサルティング=GPUに任せられるところは渡してしまえばいいのです。その高性能なGPUがコンサルティングの意義だと考えています。